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再び電話が鳴る。澤くんだ。
「金谷さん。パスポートは持ってますか?」
「確か、前にロス行ったような気がするから、あると思うよ」
「すぐ探して下さい」
「えっ、今?」
携帯電話を片手に部屋中を捜索。
「うーん、何処やったかな?ちょっと待ってて。
えーっと、ここには…ないな。ここ…は、何だコレ?
あー昔のネタ帳だ、はは、懐かし。おもしれーな。おっ、
何だこりゃ、変なオモチャがあるぞ。うわっ、虫が口から毒吐いた。
ロス行った時買ったヤツだ。
ん?これはロスで撮ったプロモーションビデオ。
ちょっとづつ近付いてるぞ。あっ…、ドル紙幣。
ありましたー、ジャジャーン。パスポート。」
「ありましたか?」
「あったあった。なんか変な髪型で写ってるよ。ははは」
「髪の毛なんかあってもなくてもどーでもイイです。
それを持って渋谷まで来て下さい」
パスポートの写真以上に変な寝癖のまま渋谷到着。
指定された旅行代理店に向かう。
どうやら、空港で直接買うより安いらしい。
店に入ると、澤くんがもう交渉を始めている。
さすがマネージャー。
「ロスまでいくらだって?」
「ちょっと待って下さい。今、空席があるかどーか確認してますんで」
「ありゃ、そっからか」
BOOMER御一行様に付いてきゃ、ロスまで行けるモンだと思ってたら、
意外にやる事多いらしい。
「空席ございました」
カウンターの向こから声がする。
「そうしますと往復で、カタカタカタ、…になります」
「えっ?よく聞こえなかったんですが」
「えー、にじゅ…万円です」
「ええええええ、そんなにすんのか、ロスって」
勢いで決めたものの、急な出費に空を仰ぐ。
ふと、カウンターの上に目をやると、
これ見よがしに貼ってある格安ツアーのビラ。
「何だこれ。安いじゃん。おー台湾安いな。台湾にすっか。
それじゃ意味ねーな。あっ、ロスもあるよ。安い安い。こっちじゃダメなの?」
「それは、来月ですので…」
「それも意味ねーな。ちょっと待って。5秒時間下さい。考えます」
ロスに行った場合、行かなかった場合、二つの人生をシミュレーション。
チッ、チッ、チッ、ポーン。
「行きます!」
うわー、思わぬ出費だ。現実だ。クラクラする。
「大丈夫ですか?」
心配する代理店の人。
「大丈夫!必ずモトは取る!」
「もうちょっと早く言ってくれれば、安く行けたのに…」
店を出ながら澤くんが申し訳無さそうに話す。
「でも、聞いたの昨日だからなあ…」
「空港の場所は知ってますか?」
「知ってるよ。成田だろ。確か千葉だっけ?電車で行くんだよね」
「…成田までのチケットも取っといた方がイイですね」
何から何まで世話になり、準備完了。
「俺のマネージャーでもないのに、色々ありがと。何かお礼しなくちゃなあ」
「じゃあ、河田はこの事知らないんで、黙ってて下さい。ダマしましょう」
いたずらっぽく彼は笑った…。
成田スカイライナー。
昔、CMで見た事がある。
「ラッパでメシが喰えるか!」
「ラッパじゃなくてサックスだよ!」
夢を抱え、アメリカに向かう男。
俺もギターを抱え、スカイライナーに乗り込む。
車内には、偶然のようにBOOMER御一行様。
「あれっ。これはこれは、NHK『笑いがいちばん』絶賛出演中の
BOOMERのお二人じゃないですか?どっか行くの?」
ワザとらしく伊勢に話し掛ける。
「ロスで仕事」
「ふーん」
スポーツ新聞熟読中の河田がこっちを見る。
「何だ、金谷かよ。どこ行くんだよ」
「俺?俺はねえ…」
ツメの甘いドッキリが、今始まった…。
…つづく
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