『俺の空〜アメリカ編〜』p.2

舞台の上にバカがいた。

伊勢浩二。
今日はBOOMERではなく、違う相方と組んでのコントだ。
ボケにボケを重ねる伊勢。
相方のツッコミが必死に付いて行こうとしてる。

あらゆる方向にボケを持って行き、話を崩して行く男。
何とかそこにツッコミを合わせ、軌道修正しようとする相方。
意志を持ったボールでリフティングをしているかのような
二人のやりとりに、俺は笑った。

「よっコント職人!やっぱあんたスゴイわ!」
「うっさいよ。ベタだなーと思ってんだろ!」
舞台を終えて帰って来た伊勢は、もう普通の人に戻っている。

「別に金谷と久しぶりに会っても話する事ねーしな」
「そーゆーこと言うな。近況話したりすんじゃねーの、一般的には」
「あー、あさってロス行くよ」
「何?仕事?」
「ああ」
「どんくらい」
「3泊」
「ふーん、ロスかあ。イイなあ」
「来りゃイイじゃん」
「じゃ、行く」

ロス行き決定。乾杯。

バカな話をつまみにグダグダ酒を飲む。
気が付きゃ朝だ。てことは明日ロスだ。

「じゃ、明日ロスで会おう」
愛用のチャリのペダルに足を掛けつつ、再会を誓う。
「何?六本木までチャリで来たのかよ?」
「おお。買ったばっかで嬉しくて。二時間かかっちゃったよ」
「バカか。帰りどーすんだ?」
「フフフフ。これは折り畳み式なのだよ。伊勢くん。
カシャンカシャンカシャン。ほらっ!あっ重っ!」

意外に重たい自転車を抱え、電車に乗り込む。

さーて、ロスに行くには何がいるんだろ?
パスポートはたぶんどっかにあるよな。
後は、飛行機のチケットか?どこに売ってるんだろ?
空港か?いくら位するんだろな?
よしギターも持ってってストリートLIVEやっちゃおう。
楽しみ楽しみ…。

自宅に戻り布団に入ると、疲れと酔いで一気に爆睡。
夢の中ではロスの青い空が…。
待ってろよーロサンゼルスー。

そんな心地よい俺の眠りを覚ます一本の電話。
「…はい。…誰?」
「澤です」
BOOMERのマネージャーからだ。
ずっとBOOMER担当だったので、
彼とも付き合いが長い旧知の中である。
「金谷さん、本気ですか?」
「えっ?何?俺はいつも本気だよ」
「分かりました。何とか調べてみます」

何だ何だ何だ?本気じゃダメなのか?
何か俺マズイ事しちゃったか?

事態がまだ掴めず、ただただ今は切れたままの携帯を見つめ続けるしかなかった…。

…つづく